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Slima 4.0のAIは、指定した1か所だけを直します

T Tim · September 8, 2026 · 約9分で読めます
Slima 4.0のAIは、指定した1か所だけを直します

Slima 4.0から、構造化ファイルへのAIの編集は項目単位になりました。「シーンを1つ足して」「あの街を南へ動かして」「第二幕にビートをもう1つ」と頼むと、指定した項目だけが変わります。触れていない箇所は、そのやり取りの間そもそも書き込みの対象になりません。変更の確認もチャット欄のJSONではなくなりました。追加されるものは本来の位置に破線のカードとして並び、変更と削除は元のカードに印が付き、承認とスキップのボタンはそのすぐ横にあります。対象は構造化ファイル5種類(脚本・ビートボード・関係図・世界地図・物語構造の年表)すべてです。

結論は以上です。ここから先は、なぜそれが難しかったのかと、実際に何が見えるのかの話になります。

これまでの問題は、AIの賢さではありませんでした

3.x系では、AIが構造化ファイルに書き込む方法は1つしかありませんでした。ファイル全体を読み、全体を作り直し、上書きする。これだけです。

「第三場の場所を港の酒場に変えて」と言えば、そのとおりに直します。そして脚本を丸ごと書き直したものが返ってきます。たいていは問題なく見えます。抜け落ちるのは、AIが気に留めていなかった側です。台詞はないがその場にいる、と昨日あなたが手で足した登場人物。夜中に並べ替えたシーンの順番。第七場のメモ欄に残した自分あての注意書き。話題に出さなかったものは特別に守られるわけではないので、書き直しのついでに消えていきます。

これは推論の失敗ではありません。編集の道具として、こちらが大きな金槌を1本しか渡していなかったのです。

いちばん厄介なのは、この消え方が静かなことです。ファイルはあり、形式も壊れておらず、文字数もそれらしく見えます。気づくのは三日後にそのシーンを開いたときで、そのころにはどの会話が原因だったかもう分かりません。

同じ脚本ファイル、AIが触れたあと

これまで:ファイル全体の上書き

第三場の話をしただけなのに、全体が書き直される

斜線は巻き添えで消えた部分です。

これから:項目単位の編集

指定された項目だけに手が入る

ほかはそのままです。

違いは正確さではありません。話題にしなかった行が、そもそも書き換えの対象だったかどうかです。

項目単位とは何か

4.0では、5種類の構造化ファイルがそれぞれ個別に指し示せる項目に分かれ、AIが使う道具も同じ単位に分かれました。

「シーンを足す」は「この脚本のシーンの並びに1件を挿入する」に対応します。「あの街を南へ動かす」は「この地点の座標を変える」に対応します。「第三場の場所を港の酒場に」は「第三場の場所の項目を書き換える」です。ファイル全体を範囲とする道具は1つもありません。

原稿が守られるのは、AIが気を利かせて残してくれたからではありません。そのやり取りでは、ほかの場所に手が届かないだけです。

5種類すべてが編集の対象です。

  • .script(脚本):シーン、あらすじ、場所、時間帯、登場人物
  • .beats(ビートボード):幕、ビートのカード、カードがひもづく章
  • .map(関係図):ノード、関係、グループ、座標
  • .geomap(世界地図):地形、地点、経路、地名の階層
  • .timeline(物語構造の年表):出来事、時期、レーン、暦

年表は最後に加わった一枚です。以前は読むことしかできませんでしたが、出来事の追加、時期の変更、名称変更、削除に加えて、作品世界の暦の設定までできるようになりました。

実際の頼み方はこうなります。「第二幕で固まっている3つのビートをばらして、あいだに転換を1つ入れて」「城壁の外の道を谷まわりに変えて」「主人公と師匠の関係を、師弟から債権者に変えて」。どれも特定の項目に着地します。あとで見に行くと、ほかの部分は置いてきたままです。

変更が本来の位置に現れます

道具が細かくなれば、確認の画面も変わらなければ意味がありません。チャット欄に差分のJSONを広げるやり方は、頭の中でファイルに貼り戻してから、勘で承認してくださいと言っているのと同じです。

これからは、変更はファイルの上に直接現れます。

  • 追加されるものは、本来の位置に破線のカードとして並びます。第五場のあとに入るシーンなら、そのカードは第五場と第六場のあいだにあります。
  • 変更と削除の予定は元のカードに印が付くので、どの項目が動くのか見て分かります。
  • 承認とスキップはそのカードの横にあります。1枚見て、1枚決める。
  • まとめて通してよければ、「このファイルをすべて承認」を一度押すだけです。
  • そのあいだに自分で直してしまい、もう当てはまらなくなった分は別枠に表示されます。一覧の中に埋もれて手の付けようがなくなる、ということがありません。

スマートフォンでは、このボタンの列が浮いているレビュー表示に隠れていました。もう隠れません。

変わったのは、じつは使い方の癖のほうです。大事なファイルをAIに触らせるには、まず壊れたときの戻し方を考えておく必要がありました。いまの最悪の結果は、スキップを3回押すことです。任せてみられるかどうかと、結果が正しいかどうかは別の問題で、手を止めていたのはたいてい前者でした。

まとめての操作は、全部通るか一つも通らないか

まとめて直すとき

ひとことで頼む「敵役を1人足して、旧市街のストーリーラインに入れて」
複数の手順に分かれるあとの手順は、前の手順が作ったばかりのノードを参照します
ひとまとまりで提示途中で失敗すれば、一つも適用されません
まとまりごと成立するか、何も起きなかったことになるか。中途半端な状態は残りません。

ひとことの依頼が、動作1つで済むことはあまりありません。「敵役を1人足して、旧市街のストーリーラインに入れて」は2手順で、しかも2つ目は1つ目の結果を使います。

AIが一度に複数のことをするときは、ひとまとまりで提示されます。あとの手順は前の手順が作ったものを参照できるので、人物を作り、関係をつなぐところまで一度に進みます。途中で失敗すれば何も適用されません。関係が1本もない孤立したノードや、存在しない人物を指す関係線が残ることはありません。

同時に直した3つのこと

関係図でAIが座標を見られるようになりました。 これまでは、どのノードがあるかしか分かりませんでした。だから編集のたびに親切に並べ直し、30分かけて整えた配置が平らにされていました。いまは位置が読めるので、「彼女の下に置いて」が通ります。「下」がどこなのかを分かっているからです。

空のファイルを作ってもらえます。 「年表を作って」「関係図を開いて」で構いません。できあがるファイルは、ファイルツリーを右クリックして自分で追加したものとまったく同じです。中途半端な形式ではなく、そのまま開いて使えます。

失敗が言葉になりました。 返答が同じことを繰り返しはじめると、AIは自分で止まります。画面を埋め尽くすまで回り続けることはありません。ツールの実行に失敗したときは理由を説明します。赤い印だけを見て推測する必要はもうありません。

なぜ4.0まで待つ必要があったのか

ファイル形式が先で、AIはそのあとだからです。

シーンが本当に1件のデータになっている脚本ファイルがなければ、その1件だけを直すことはできません。3.x系では脚本は別のスタジオにあり、関係図は1枚の絵で、年表とビートボードはそもそも存在しませんでした。この版でそれらを1つのファイルツリーにまとめ、それぞれに形式を与えました。項目単位の編集が指し示す先は、そこで初めて生まれています。

順番は入れ替えられません。形式があって、指し示せる。指し示せて、1項目だけ直せる。1項目だけ直せて、その場での確認が描ける。どれか1つ欠けると、全体がファイルの上書きに戻ります。

つまりこの版で入れ替わったのは、AIの手つきです。新しいファイルを作るのではなく、いま手元にあるファイルに手を入れる。製品の形が先に変わり、AIの能力があとから追いつきました。この版が3.9ではなく4.0である理由はここにあります。

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