Slima 4.0から、脚本は別のスタジオに住むものではなく、ファイルツリーの中の1つのファイル形式になりました。作品の中で右クリックして「新規脚本」を選ぶと、1話が.scriptファイル1つになります。シリーズ設定、ビートボード、関係図、世界地図、人物と場所のメモが、すべて同じツリーの上に並びます。シーンはドラッグで並べ替えられるカードで、あらすじ・場所・シーン注記はカードの上でそのまま直せます。登場人物は台詞から自動で検出され、自分で足した人物は台詞を書き直しても消えません。上演時間は書きながら計算され、見出しの行に目標に対する割合が出ます。書き出しは台湾形式とハリウッド形式のPDFとWordに対応します。脚本スタジオは終了に向けた段階に入りました。これまでの作品はそのまま開けて書き続けられ、できなくなるのは新規作品の作成だけです。「⋯」メニューには、作品をこちらへ複製する変換ツールが加わりました。
以下は、置き場所が変わった結果、実際に何が変わったのかという話です。
別々に置くことの代償は、機能一覧には書かれません
3.x系の脚本スタジオには、あるべきものは揃っていました。シーンボード、人物、ストーリーライン、世界観、メモ。機能一覧だけを見るなら文句のつけようがありません。
問題は、それが残りの原稿と同じ場所になかったことです。
第7話を書いているとします。この回には主人公が3年前に遭った火事の設定が要りますが、その設定はライティングスタジオの世界観フォルダにあります。半年かけて積み上げたものです。取れる手は2つでした。あちらへ移って確認して戻るか、1部コピーして脚本スタジオのメモに貼るか。貼った写しは貼った瞬間から古びはじめますし、元が変わったときに戻って直す人はいません。
AIではもっとはっきり出ました。一度に片側しか読めなかったからです。脚本の中で「このシーンは主人公の母の死と矛盾していないか」と尋ねても、AIの手元にあるのは脚本だけで、母にまつわる筋は別のツリーにあります。それらしい答えは返ってきます。ただ、その答えに根拠がないだけです。
同じ物語、AIがこの回で読めるもの
3.x:脚本は別のスタジオに
シリーズ設定・各話・あの街の地図がばらばら
藍色の行だけが読めます。ほかは向こう側です。
4.0:脚本はツリーの中のファイル
すべてが同じツリーの上に
半年前に書いた設定まで、一度に読めます。
右クリックで「新規脚本」、1話1ファイル
作り方は原稿を1つ作るのと同じです。ファイルツリーで右クリックし、「新規脚本」を選びます。
1話が.scriptファイル1つです。フォルダの切り方は自由です。シーズンごとにフォルダ、話ごとにファイルという並べ方がいちばん多いでしょうが、そうしなければならない理由はありません。1話3分の縦型ドラマなら、1つのフォルダに20本入れても構いません。
ファイル名もこの版で整えました。タブや脚本の配役チップといった場所で拡張子が表に出なくなり、ファイルツリーで見える名前と揃いました。アイコンも統一しています。
1つのシリーズの下に
.script.beats.map.geomap.mdシーンは一覧ではなくカードです
シーンボードがカードのボードになりました。ドラッグで順番を入れ替えられます。構造に手を入れるときの違いは大きく、第9シーンを2つ前に送る作業が、ボードの上では引いて置くだけになります。
カードの上でそのまま直せるものは3つ。あらすじ、場所、シーン注記です。場所を1行直すためにエディタへ入る必要はありません。
カードにはそのシーンに実際に書かれた内容も見えます。最初に書いたあらすじだけではありません。あらすじと本文が食い違うのはよくあることで、エディタでシーンを丸ごと書き直したのに、あらすじは3か月前のままという具合です。同じカードに並べば、その食い違いは隠れる場所がありません。
ボードにはシンプルと詳細の2つの密度があります。全体を眺めるときはシンプル、1シーンずつ見るときは詳細に切り替えます。小さなことをもう1つ。カードを押して誤って編集モードに移ることがなくなり、入るときはカードの「シーンへ移動」を使います。
登場人物:検出は流れ、手で足したものは残ります
シーンカードごとに登場人物の名簿があり、出どころは2つで、それぞれ区別して表示されます。
一方は台詞から自動で検出した名前です。このシーンで誰かの台詞を書けば、その人が名簿に載ります。台詞を直せばこちらは追随します。手入れは要りません。
もう一方は自分で足した名前です。その場にいるのに一言も話さない人物は検出されないので、自分で入れます。手で足した名前は、台詞を書き直しても消えません。 そこにいる根拠が台詞ではなく、あなたの判断だからです。逆に、誤って拾われた名前は外せますし、あとで入れ直せばその除外が解けます。
どちらもいつでも足したり外したりできます。区別して表示するのは「この名前は誰が載せたのか」がひと目で分かるためです。片方は放っておいてよく、もう片方はあなたにしか触れません。
上演時間が書きながら計算されます
この仕事で見る単位は文字数ではなく時間です。
そこで.scriptファイルは、書いているあいだずっと上演時間を見積もります。台詞とト書きは別の速さで計算し、シーンごとに転換の時間を足します。見出しの行には、いまの見積もりと自分で決めた目標、そして目標の何パーセントまで来たかが出ます。行きすぎたり大きく足りなかったりすると色が変わります。
見積もりに使う値は変更できます。初期値は出発点にすぎないので、台詞が速く画が遅い作品なら、その作品の値に直してください。目標時間も脚本ごとに決めます。1話3分のものと1時間のものを同じ物差しで測る理由はありません。
戻ってきた基本の道具
ファイル形式が変わったのに合わせて、脚本の側に本来あるべきだったものが加わりました。
- 元に戻す(Ctrl+Z) と検索と置換
- 文を選んで右クリックの「AIに聞く」
- 集中モード
- 書き出し:台湾形式とハリウッド形式のPDFとWord
書き出せる形式はこの2つで、日本式の書式には対応していません。将来の話をここで約束するつもりはないので、いまの事実として書いておきます。
コメントもあります。この版ではすべてのファイル形式にコメントを残せるようになり、脚本・ビートボード・関係図・世界地図・物語構造の年表がそれぞれ専用のコメント印とパネルを持ちます。コメントを押すと、それが付いている位置へ移動します。一緒に読み合わせるとき、意見を付けるべき場所に付けられるようになったので、「第3シーンの2ページ目のあの台詞」と書いた別紙を回す必要がなくなりました。
スマートフォンでは脚本ファイルは読み取り専用です。見ることはできますが、書くことはできません。コメントはこの制限を受けないので、移動中に引っかかるシーンを思いついたら、自分あてに残しておけます。
AIも脚本ファイルを直します
.scriptはこの版の構造化ファイル5種類の1つなので、AIの編集も項目単位です。第3シーンの場所を変えてほしいと頼めば、その項目だけが書き換わり、ほかのシーンはその回そもそも書き込みの対象になりません。変更は本来の位置に破線のカードとして現れ、承認とスキップのボタンがその横に付きます。
これは単独で扱うだけの話なので、別の記事にしてあります。AIが直すのは指定した1か所だけ。
脚本スタジオは終了に向けた段階に入りました
いちばん大事なところを先にはっきりさせます。終了は削除ではありません。
脚本スタジオにある作品はそのまま開けますし、書き続けられます。いま手がけている作品を最後まで仕上げられるよう支えますし、途中で放り出すことはありません。変わるのは1つだけです。あちらでは新しい作品を作れなくなるので、これから始める作品はライティングスタジオで開いてください。
移してきたい場合は、作品ごとの「⋯」メニューに「ライティングスタジオの新しい作品として複製」があります。このツールがすることは次のとおりです。
- 各話を
.scriptファイル1つに移し、シーズンと話のフォルダ構成はそのまま保ちます - シーズンと話の構成を、1枚のビートボードとして組み直します
- 人物と場所をメモに移します
- ストーリーラインや世界観、企画ページの内容も対応するファイルに移します
- 対になっている伏線のメモをつなぎ直します。AがBを受ける、あの関係が新しい作品でも互いを指したままになります
最後の項目が、変換ツールでいちばん手のかかるところです。伏線のメモは「別のメモの番号」を持っていますが、複製されたメモはすべて新しい番号を受け取ります。そのため、対応づけを一度まとめて計算し直す必要があります。し直さなければ、新しい作品の伏線はすべて存在しないものを指すことになり、しかもエラーは1行も出ないので、その伏線を使う日まで気づけません。
複製は移動ではありません。 元の作品は脚本スタジオに1文字も欠けずに残ります。両者は連動もしません。複製したあとに古い作品で直した内容は新しい作品に流れてきませんし、その逆も同じです。その時点のスナップショットであって、分身ではありません。
ですから安全な順番はこうです。まず1部複製し、新しい作品の中で試したいことを一通り試す。手になじんだら重心を移す。古いほうはそのあいだもそこにあります。
次に読むなら
- ライティングスタジオで脚本を書くとどうなるか:脚本
- AIが構造化ファイルをどう直すのか:指定した1か所だけ
- このツリーにほかにどんなファイルがあるか:ライティングスタジオ
