本番環境に最後に届いたバージョンは、7月末の3.4.5でした。それから27回のリリースと113件の変更を重ねてきましたが、そのどれもあなたの画面には出ていません。全部テストブランチで待機して、このタイミングでまとめて渡ることになったからです。
というわけで、この記事は長くなります。まとめて追いつける機会はここだけです。一つだけ読むなら、いちばん最後の「更新の前に」をどうぞ。この記事で本当に必要になるのはそこです。
まず、今回がなぜ4.0なのか。3.9でもよかったはずです。変わったのは機能の数ではありません。製品の形そのものです。スタジオが三つから一つに。ファイルの種類が「文章と画像」から六つに。AIは文章を書くだけの存在をやめ、構造を編集し始めました。UIの言語は五つから六つへ。モバイル版は手直しで済ませず、一から作り直しました。これは積み上げの結果ではありません。骨格が入れ替わりました。
1. 三つのスタジオが一つに
スタジオ
3.x:三つの部屋
行き来するには本棚まで戻る必要がありました
スタジオが三つ、ファイルの一覧も三つ。AIは片側しか読めませんでした。
4.0:ライティングスタジオ一つ
脚本はツリーの中のファイルの種類です
シリーズバイブルも各話も舞台の地図も、AIがまとめて読みます。
以前は、小説を書く場所、脚本を書く場所、読者の反応を見る場所がそれぞれ別の部屋にありました。行き来するには、いったん本棚まで戻る必要がありました。
いまはライティングスタジオだけです。**脚本はライティングスタジオの中のファイルの種類になりました。**エクスプローラーで右クリックして「新規脚本」、1話につき1ファイル。技術的な細部の話に聞こえますが、意味はもっと大きいところにあります。シリーズバイブルも、各話の脚本も、物語の舞台になる街の地図も、ようやく同じツリーの中で並びました。AIはその全部をまとめて読みます。
書式は台湾式とハリウッド式の2つに対応しています(日本の縦書き・柱書き書式は、現時点では未対応です)。
**脚本スタジオは役目を終えます。**すでに中にある作品はこれまでどおり開けますし、書き続けられます。シーズンの途中で放り出すことはしません。できなくなるのは、新しい作品を始めることだけです。旧作品の⋯メニューには「新しいライティングスタジオの作品として複製」があります。各話を.scriptファイルに変換し、シーズン構成をビートボードとして組み直し、登場人物と場所を通常のメモへ移し、対になっている伏線メモのつながりも張り直します。これは複製です。元の作品はその場所に残ります。
AI ベータリーダーは独立したスタジオのままです。この間に動いたのは二つ。レポートの観点の説明と「次の一手」が、アラビア語とスペイン語で英語に戻ってしまっていたのを埋めました。そしてレポートの末尾に短い問いが増えました。このレポートをもとに原稿を直しますか、と。
2. 六種類のファイル、一つのツリー
多くの執筆ツールはテキストファイルだけを渡してきて、残りは頭の中で覚えておいてください、という構えです。今回のリリースは、その「残り」に置き場所を用意しました。
作品一つの下に
.md.script.map.geomap.timeline.beats.md原稿:いま実際に書いている章です。タブ、エディタを分割、作品全体の検索、集中モード。
.script脚本(新規):脚本のふりをしたテキストファイルではありません。シーンと要素を本当に持っています。シーンボードはドラッグで並べ替えられ、あらすじ、場所、時間帯、登場人物はカードの上でそのまま直せます。登場人物はセリフから読み取るので、セリフを書き換えれば一緒に更新されます。その場にいるのに一言も話さない人物は手で足せますし、あとでセリフを書き直しても消えません。尺は打ちながら推定します。セリフとト書きを別のレートで数え、シーンごとの間も加算して、タイトルバーに目標に対する合計が出ます。
.map関係マップ(ホワイトボードに進化):複数のノードを範囲選択してまとめて動かす、整列ガイドとスナップ、Ctrl+Zで元に戻す・やり直す、キャンバスへ直接テキストを置く、メモをドラッグで持ち込むとカードになる、SVGとPNGで書き出す。スマートフォンでも動きます。一本指でパン、二本指でズーム、長押しが右クリックです。
.geomap世界地図(新規):物語の舞台になる世界を描きます。いま使えるブラシは水域・平地・山地に森林、地点シンボルは8カテゴリに37個。川は海にぶつかるところで自分を切り、地名はズーム階層に応じて間引かれます。シードから一枚まるごと生成することも、マス目を一つずつ塗ることもできます。書き出しはPNGです。地図はまだベータで、ブラシは順次増えます。
.timeline年表(新規):章、シーン、メモを一本の軸に並べます。スイムレーンを見れば、ある人物の線がどのストーリーラインと交差しているかが分かりますし、一人だけを残して追いかけることもできます。世界に独自の暦を持たせることもできます。月がいくつあるか、ひと月は何日か、一週間は何日か、紀元の名前は何か。暦は表示の形式にすぎません。いつ変えても、切ってもかまいません。出来事とその順序は損なわれません。日付を使わず、前後関係だけを並べる作り方もできます。
.beatsビートボード(新規):幕が列、ビートがカードで、カードは最終的にそれが化ける章ファイルを抱えられます。ツリーから章をドラッグして入れる。作品の形が変わったら、ビートを別の幕へ動かす。パブリックドメインの構成テンプレートを4つ内蔵しています。三幕構成、台湾ドラマの三幕六ビット構成、起承転結、フライタークのピラミッド。
画像、PDF、データファイルもツリーの中で開きます。そして**どの種類にもコメントが付くようになりました。**コメントをクリックすると、それが属するカードまで画面が飛びます。
3. AIが文章を書くだけの存在をやめました
今回いちばん手こずった部分であり、いちばん説明する価値のある部分です。
これまでAIは、構造化されたファイルをまるごと上書きすることしかできませんでした。つまり、あなたが話題にしなかった内容が静かに消えていました。いまはフィールド単位のツールを使います。シーンを1つ足して、あの街を南へ動かして、第二幕にビートをもう1つ。そう頼めば、AIは指定した行、指定したノードだけに触れます。
構造化された5種類、脚本・ビートボード・関係マップ・世界地図・年表は、すべてこの方法で編集できます。
**変更は画面の上に現れます。**新しく増えるものは、それが入るべき位置に破線のカードとして出ます。書き換えと削除は元のカードに印が付き、採用と見送りのボタンがすぐ隣にあります。AI チャットのパネルでJSONを展開して、何をしたのか読み解く作業はもう要りません。「このファイルの変更をすべて採用」は1クリックです。辻褄が合わなくなった変更は、別に一覧されます。
**バッチは全部通るか、全部通らないかです。**AIが一度に複数のことをするときはまとめて提示され、4つ目で失敗したら1つ目から3つ目も適用されません。後の手順は、同じバッチの中で先に作られたものを参照できます。「登場人物を追加して、その人をあのグループに入れて」という頼み方が通ります。
細かいけれど、実際に出会うところ。返答が同じことを繰り返し始めたら、自分で止まるようになりました。ツールの実行に失敗したときは、赤いバツだけを出さずに理由を説明します。関係マップのAIは座標が見えるので、「彼の下に置いて」が通ります。1時間かけて整えたレイアウトを崩されません。空の年表、関係マップ、ビートボードを作ってほしい、と頼むこともできます。
4. 執筆記録
ここは単独で読む価値があります。
2026年9月1日から、小説家になろうは投稿作品にAI利用区分の申告を求めるようになりました。「AI直接使用」「AI間接利用」「AI補助的利用」「AI不使用」の4つです。カクヨム、アルファポリス、電撃小説大賞なども、おおむね同じ線の引き方をしています。
Slimaは文章を生成して差し出す道具ではなく、原稿を読んだうえで答えるAI コーチです。ですからSlimaを使った書き方は、多くの場合「AI補助的利用」の枠に収まります。ただし、どの区分を選ぶかを最後に決めるのは、各プラットフォームと、書いたあなた自身です。
Slimaは制作の過程を、それが起きているその場で記録しています。手入力、貼り付け、インポート、AIが書き込んだ分を別々に数えるので、手元に残るのは去年の春の記憶ではありません。具体的な数字です。
- 創作再生:プロジェクト全体を時間軸に沿って再生し、作品が伸びていく様子を眺められます。書かなかった週は平らなまま流れ、書いた週は立ち上がります。
- 打鍵単位のリプレイ:ある一節がどう書かれたかを一手ずつ辿れます。AIが書き込んだ箇所は紫で示されます。いまのところ、プレーンテキストの原稿のみ対応です。
- 公開用の執筆記録ページとバッジ:過程を読者に見せられます。バッジはプロフィールやブログに貼れます。リンクはslima.aiへ戻るので、外側から似せて作るのが難しくなっています。
- 執筆記録の証明書:作品の履歴を、公開の場で検証できる形で発行します。ハッシュチェーン(SHA-256)による固定と、サーバー側のタイムスタンプが付きます。ProとTeamでは全作品に含まれ、1作品ずつ購入することもできます。
- 参考資料の蓄積:この作品のために設定、世界観、人物ファイルをいくつ作ったか。「ファイルが3個から15個に増えた」ということ自体が過程です。
- 申告の下書き:小説家になろう、カクヨム、Amazon KDPがそれぞれ何を訊いているかに合わせて、過程の事実を並べ直します。
境界線を一文で書いておきます。**これらは制作過程の記録であり、申告の根拠です。ある文章がどう生まれたかについての判定ではありません。**私たちはそう扱いませんし、あなたにもそう扱わないでいてほしいと思っています。
5. 書く体験
- 読書・校正モード:エディタを読むためのレイアウトに切り替えます。通しで読むときに向いています。
- 読み上げ:段落をクリックすると、そこから読み始めます。脚本では登場人物ごとに別の声を割り当てられ、シーン見出しとト書きはナレーターが読みます。OSに入っている音声を使うので、費用はかかりません。
- 句読点が入る音声入力:「てん」と言えば読点が入ります。オフラインの音声モデルを入れると、間や抑揚から句読点を推測するようになります。音声はこの端末から出ません。口述の言語は、UIの言語と別に設定できます。
- 章ごとの進捗:章に目標文字数と状態(執筆中、レビュー中、完了)を持たせられます。エディタのサイドバーでも原稿一覧表でも、作品全体が一目で分かります。
- エディタを分割、メモの色は4色に統一、ファイルを切り替えても読んでいた位置が残ります。
6. チーム
**チームのワークスペースを設計し直しました。**10個並んでいたタブを、サイドバーの3つのグループ、作業・チームの知見・管理にまとめ、それぞれのペインに固有のURLを与えました。
- 機密のSkill:管理者はSkillを機密に指定できます。メンバーのAI チャットはそれを使いますし、その内容にも従いますが、本文がメンバーの端末に届くことはありません。開けるのは管理者だけです。
- 監査:チームのSkillが誰にいつどこから読まれたか、伏せられたか、読み取りが多くて制限されたか、機密の告知にまだ同意していないメンバーは誰か。
- 自分の本棚に並ぶチームのタブ:チームごとに1つ。チームの作品を開くと役割で行き先が変わり、書ける人はエディタへ、レビュアーは読み取り専用のワークスペースへ入ります。
- 章のレビュー:提出された章は、すべての作品を横断してチームの概要に集まります。承認と差し戻しは、章そのものが持つ状態です。
Teamプランはクローズドベータです。1チームずつ、こちらの手で設定してご案内しています。試したい方は、Teamページに詳細と申し込みフォームがあります。
7. 作品を見せる
- 「展示」タブ:作品が3Dの本になります。中には実際の原稿が入っていて、めくれますし、任意の章へ飛べます。表紙は10種類を内蔵、自分でアップロードもできます。小口は金・銀・白から選べます。
- プライバシーセンターの「公開しているもの」:共有リンク、公開中の執筆記録ページ、証明書が一か所に並びます。その場で開くことも、取り消すこともできます。
- 共有した閲覧ページのレイアウトを整理しました。
8. 同期とデータの安全
ここは「直したこと」の話です。分量は軽くありません。
- 端末をまたいだ編集の衝突が**黙って上書きされることはなくなりました。**検出したらはっきり知らせますし、どちらを残すかはあなたが決めます。両方残すこともできます。
- 同期がフォルダの中のファイルを外へ持ち出すことはなくなりました。同じ名前の章が勝手に増えることもありません。
- サーバー側のデータが以前の状態へ戻されたときも、ローカルの原稿はそのまま残り、自分で再アップロードします。
- 削除した章を履歴から戻すと、その章のメモ、保存前の下書き、開いていたタブも一緒に戻ります。
- 同期が続けて失敗したときは、自動の再試行を止めて知らせます。30秒ごとに空回りし続けることはありません。
- クラウドに見当たらず、ローカルにも控えのない本文や画像は、そうとはっきり伝えます。黙って空白になることはありません。
9. 言語とアクセシビリティ
- **日本語UIが公開されました。**UIの言語は6つになりました。繁體中文、English、Español、العربية、한국어、日本語。
- **アラビア語のRTLを全体的に直しました。**方向を示す矢印が正しく反転し、符号の付いた数字が逆さまにならず、余白と揃えは論理方向で扱うようになりました。
- 言語の設定は、あなたが実際に選んだ言語に従うようになりました。
- 英語に戻ってしまっていた62か所を、アラビア語とスペイン語で埋めました。
10. モバイル
デスクトップ版を小さくしたものではありません。作り直しました。エディタ、エクスプローラー、AI チャット、チームの領域はすべて配置し直しています。ポップアップのメニューは、下から立ち上がるシートに変わりました。タップの的も広げました。以前は22×22しかない箇所がいくつもありました。ホバーでしか呼べなかった操作には、タッチでも届く入口を用意しています。
11. 習慣づくり
- 育てているスライムがAI コーチのアバターになりました。考えているとき、原稿を読んでいるとき、書き直しているとき、返事をしているときで表情が変わります。AIの修正を採用すると喜びますし、クリックすればなでられます。
- 執筆の節目が4段階から10段階に増えました。1,000文字から100万文字まで、どれも現在の原稿文字数で測り、アーカイブした作品も数に入ります。クレジットは手動で受け取る形になり、Insightが受け取れる段階に印をつけ、まとめて受け取ることもできます。同じ節目が二度数えられることはありません。
- 今日のことばが本棚を覆うモーダルではなくなり、画面上部の軽いトーストになりました。スライムが一つ届けてくれて、別のことばに替えることも閉じることもできます。
- 1日の目標文字数を自分で決めて、あとから変えられます。スライムの家のデイリークエストから直接どうぞ。エディターのサイドバーの今日の目標も、同じ設定画面を使うようになりました。
12. アカウント、プラン、ご意見
- 対外的な署名:公開の執筆記録ページ、証明書、システムからのメールは、設定したペンネームを使います。空欄のときだけアカウント名に戻ります。
- 請求まわりを一か所に:サブスクリプションと追加購入が、すべて同じページに集まりました。
- 解約するとき、アカウントを削除するとき、理由を残せます。任意です。
- AI チャットの無料枠の表示が、契約中のプランの実際の割り当てを見るようになりました。
- プランの上限を超えたとき、どの作品が読み取り専用になるかは本棚の並び順で決まります。どれがそうなったかも見えます。
- AIの返答には高評価と低評価を付けられます。低評価のときは、原因を調べるためにその部分の会話を添えるかどうかを選べます。既定では添えません。
更新の前に
3.4.5から4.0.0へ
先にこの4つを読んでください。
- **3.4.5から4.0.0へ一気に上がると、ローカルのデータベースで12段階の更新が走ります。**初回の起動はいつもより時間がかかります。途中でタブを閉じないでください。
- **更新したあとで古いバージョンへ戻さないでください。**古いバージョンが新しい形式のデータの上で動くことになります。開かないことより危険です。
- **脚本スタジオは役目を終えます。**古いプロジェクトは、内蔵の変換ツールでライティングスタジオへ移してください。中へ入ると案内のバナーが出ます。
- インストール済みのPWAは、アイコンを自分では更新しません。新しいアイコンにしたい場合は、一度削除して入れ直してください。
この先
もう少し踏み込みたい方へ。それぞれ一つのことを書いた記事が三本あります。
製品ページはこちらです。ライティングスタジオ、ライティングスタジオで脚本を書く。
このバージョンは長く寝かせすぎました。私たちが試せていない隅は必ずあります。何かあれば[email protected]までご連絡ください。Discordでひとこと言っていただいてもかまいません。4.0が出てからしばらくは、こちらも画面を見ています。
