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AIは脚本をどう手伝うか

最終更新 September 10, 2026 · 約9分で読めます

ひとことで言うと:AIがいま一つの.scriptに対して何ができるかを説明します。七つの項目単位のツール、脚本の上でそのまま確認できる提案の行、右クリックのクイック操作、そして旧・脚本スタジオのAIがもう答えない理由です。

『墨潮 ―ぼくちょう― 脚本』をライティングスタジオで開いたところ。左は第01話「写本娘」の編集表示、右は AI 執筆コーチのパネル。沈硯自身のセリフの下に、コーチが彼女のセリフをもう一行足していて、その行は緑の背景に採用と見送るを並べたまま、まだ何も採用していない。

先に一つ:旧スタジオのAIは止まっています

開いたのが旧・脚本スタジオの作品なら、AIのパネルはもうありません——空のまま残っているのではなく、取り外されました。その作品のシーンも人物もストーリーラインも読めず、何も変えられません。旧のドキュメントは「AIが脚本全体を読む」と約束していましたが、旧の器の作品について、その約束はもう成り立ちません。誤解するのは旧ドキュメントのとおりに試した人なので、先に書いておきます。

AIに脚本を触らせるには、脚本がライティングスタジオの.scriptファイルである必要があります。旧作品の持ち込み方は旧・脚本スタジオでいまできることにあります。

.scriptは構造化ファイルなので、AIは項目単位で動きます

.md原稿ならAIは一段まるごと書き直し、あなたは並べた比較で確かめます。.scriptはその道を通りません。関係マップ、年表、ビートボード、世界地図と同じ構造化ファイルで、AIはファイル一式を返さず、名前の付いた操作を一つずつ送ります。

理由はごく実際的です。AIが読んでいるのは生のJSONではなく要約で、しかも一シーンにつき先頭40行までしか印字されません。超えたぶんは「N行を省略」と書かれます。ファイルごと書き直させれば、見えていない後半のセリフは存在しないものとして扱われ、黙って消えます。エラーもどこにも出ません。ですから.scriptに対するファイル全体の上書き、部分の置き換え、ファイルの削除は「おすすめしません」ではなく、拒否です。

脚本のツールは七つあります。

できること どんな注文に応えるか
シーンの追加 / シーン見出しの変更 / シーンの削除 「夜市のシーンの前に、沈硯が一人で書房へ帰るシーンを入れて」
要素の追加 / 要素の変更 / 要素の削除 要素=脚本の一行。ト書き、人物、セリフ、括弧書き、転換、カメラ
まとめて実行 「シーンを一つ足して、その中にセリフを三行書いて」——四往復ではなく一回で

わざとできないようにしてあることもあります。待たずに済むよう先に書いておきます。

  • 書式の設定は変えられません。 台湾式とハリウッド式はあなたの決めることで、ツールは届きません(書式の切り替え:台湾式とハリウッド式)。
  • シーン番号も並び順も文字数も決めません。 それらは計算で出るものなので、AIが言えるのは「このシーンのうしろに」までです。
  • idをでっち上げません。 指し示すシーンや行は、実際に読んだものだけです。見えないときは推測せず聞き返します。
  • 一行の種別は変えられません。 セリフをト書きにするなら、消してから一行足すことになります。
  • 見えていない行には手を出しません。 40行を超えたシーンで手元にあるのは切れた版です。指示は「このシーンは長すぎて全部は見えない」と伝えて確認を取ることで、目をつぶって直すことではありません。ほんとうに長いシーンは、先に分けてから頼んでください(シーンの分割と結合)。

項目単位の編集そのものの説明はAIが構造を編集する:項目単位の編集とはに。ここでは繰り返しません。

提案は脚本の上に出ます。隅ではありません

AIが出す提案は一つずつ本文の中に描かれ、左の色帯で囲まれます。足された行は緑、変更は琥珀(元の行は取り消し線で薄くなり、新しい行がその下に付きます)、削除は赤。シーンが丸ごと増えるときは緑の塊が現れ、見出しに「新しいシーン」と出ます。見出しの変更は「見出し → 内 佑安書房 · 夜」のように、そのまま読める形で出ます。本物の脚本の組版部品を使っているので、見えているものが採用後の姿です。

右上に小さなピルが浮いて「未確認 N 件」と出ます。その隣が「このファイルの提案をすべて採用」。採用を押すまで、ファイルは1バイトも変わっていません。

四種類の印、古くなった提案の扱い、まとめて実行がどう一か所に合流するかはAIの構造変更をその場で確認するに一式あります。スマートフォンでも確認できる理由も、そこに。

一行を右クリック:パネルを開かなくても

どの行でも右クリックすると、コピーやシーンの分割、メモの追加と並んで、AI クイック操作が出ます。推敲 / 膨らませる / 書き直す / 縮める / 講評 / 発想、それに「チャットに追加」。

.mdと違うのは、先に選ぶ必要がないところです。選択していなければ対象はその行全体。セリフの上で右クリックしたなら、その一行に何かしてほしいということです。

「推敲」は、旧のドキュメントが「セリフの推敲」と呼んでいたものの今の姿です。本の文脈を読めるので、「この人物のしゃべり方は変えないで」という注文はまっとうです。ただし人物の声は、いまは「人物設定」の項目ではなく、あなたの脚本そのものと、あなたが書いた人物ファイルから来ます(登場人物:キャスト表と人物ファイル)。

「チャットに追加」は、その行をAI チャットのパネルに文脈として送ります。「問題はこの一行ではなく、シーン全体の形だ」というときに。

章の分析も脚本に効きます

.scriptには散文としての見せ方があるので、章の分析は使えます。右パネルの分析タブの四つがそのまま走ります。緩急のスキャン / セリフ / 重複 / 整合性。

旧記事の約束二つを、ちょうど引き受けた形です。旧の「シーン構成の分析」はおおむね緩急のスキャン、「人物の一貫性」は整合性です。違うのは単位が一話=一ファイルで、一シーズンではないこと。話をまたいで見たいことは、ビートボードや年表に並べたほうが読めます。

分析は押したときだけ走ります。二段階の確認があり、裏で勝手に分析することもありません。四つが何を見ているかはInsightの全体像に。

伏線と整合性:メモに移りました

旧の「伏線と回収の照合」は、旧メモタブの伏線の欄に頼っていました。同じ仕事はいまメモでやります。行の上で右クリック →「伏線を追加」または「回収を追加」。メモはその行に固定されます。AIはメモを読めますし書き込めるので、「埋めた伏線は全部回収できているか」はこれまでどおり問えます。答えのある場所が、脚本専用のタブからメモパネルに移っただけです。伏線と回収のメモとメモとAIへ。

推定の尺が、AIの書いたシーンにも付いてくるようになりました

ツールバーの「推定 Xm / 目標 m」はその場で計算しています。毎回すべてのシーンのセリフとト書きを読み直します。以前はファイルに保存された古い値を読んでいたので、AIやMCP経由で書き込まれたシーンは0として数えられていました。「AIにシーンを書かせたのに尺が動かない」の原因はこれです。いまは採用すれば数字も動きます。

「できません」と言われるとき

同じ頼みごとが『墨潮 ―ぼくちょう― 脚本』では通り、作ったばかりの本では助言しか返ってこない。これは壊れているのではありません。脚本の七つのツールは、どの会話にも並んでいるわけではありません。この本にすでに.scriptがある、いま一つ開いている、AIがたった今作った——三つのどれか一つが成り立ったときに開きます。判定と対処はAIが構造を編集できるときと、できないときに。

AIが自分から動くことはありません。裏で脚本を書き換えたり、シーンを勝手に埋めたりはしません。AI チャットであなたが口を開いたときだけ動き、動いたあとも採用を押すのはあなたです。

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